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シャーロック・ホームズ・スペシャル その4

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 第4回目のテーマは、「 人間性の闇と光 」でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。今回は主に「 ボール箱 」、「 ボスコム谷の謎 」の2つを取り上げています。 ・「 ボール箱 」(1893年)( シャーロック・ホームズの回想 に収録(←Amazon PR))  幸せそのものだった夫婦が、ある人物の嫉妬による謀略で崩壊し憎悪の連鎖を生み出していく様を描いた。 → 人間の嫉妬や怨念といった一般的な感情から殺人事件に発展していった。憎しみと苦しみの連鎖が生じ、ブレーキがかからず、殺人を犯し、切り取った耳を送るといった異常行為となってしまった。これは人間の情念、人間が元来持っておるもので、どうにもならない。こういった人間性の闇に焦点を当てている。 ・「 ボスコム谷の謎 」(1891年)( シャーロック・ホームズの冒険 に収録(←Amazon PR))  数多くの状況証拠から父殺しは間違いないとみなされた息子。しかし、事件を調べていくうちに、人間的側面が表面化し、冤罪であることがわかった。 → 犯罪の謎を解くうえでは、人間考察が役に立ち、これから人間の中には闇だけではなく、健全さもあるとした。  シャーロック・ホームズ・シリーズは、警察も分からないような事件をホームズの冷徹な推理能力を用いて、謎解き・トリックを知るという楽しさがある。この事件を解明するには、事件を引き起こしたその人間の人間性を探究することがが重要とした。なぜなら、どんな時代でも事件はあり、人間性に潜む暴力性は根絶できないからである。このシャーロック・ホームズ・シリーズは、「名探偵」という設定によりドイルが仕掛けた人間性の闇と光を照らし出す仕組みでもあり、探偵小説の域を超えた一種の文学作品ではないか。 【本】 ・ NHKテキスト (←PR:Amazonリンク) 過去の関連記事 ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その3 (2024年2月5日公開) ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その2 (2024年2月4日公開) ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その1 (2024年2月4日公開)

シャーロック・ホームズ・スペシャル その3

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  第3回目のテーマは、「 ホームズと女性 」でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。今回は主に「 ボヘミアの醜聞 」、「 サセックスの吸血鬼 」の2つを取り上げています。 ・「 ボヘミアの醜聞 」(1891年)( シャーロック・ホームズの冒険 に収録(←Amazon PR))  王族スキャンダルの物証となる写真を取り戻そうとするホームズ。ホームズが持っている、女性の火事の際の典型的な行動の裏をかき、名探偵に苦杯をなめさせるアイリーン・アドラーの活躍を描いたもの。 → ホームズの女性観が垣間見え、しかしアイリーン・アドラーはさらに女優をしていたということもあり、一枚上手でこれを見越していた。これを逆手にとり、ホームズの裏をかき、目的の写真をホームズに渡さなかった。ホームズは女性に負けることに対するこだわりはなく、頭脳で負けたことに潔く認め、敬意を表している。当時としては珍しい。 ・「 サセックスの吸血鬼 」(1924年)( シャーロック・ホームズの事件簿 に収録(←Amazon PR))  吸血鬼のように赤ん坊の血を吸ったり、前妻との間の子供、ジャック少年を叩いたりと恐るべき児童虐待にみえたペルー人の母親の行為。夫が聞いても答えない、実は、赤ん坊への嫉妬からジャック少年が赤ん坊に毒矢を刺していた。そこで、ペルー人の母親は、赤ん坊、ジャック少年両方ともを守ろうとする強烈な母性愛から発したものだったことが判明する。 → 真相を夫に伝えると、夫も耐えられない、ジャック少年を責めるかもしれないと妻の葛藤を描いている。ここでも、自立した女性像を描いている。 ・(テキストのみ)「 第2のしみ 」(1904年)( シャーロック・ホームズの生還 に収録(←Amazon PR)) → 19世紀後半~20世紀初頭の時代では、女性はこうあるべきといった道徳感(← 家庭の天使で良き妻、良き母)が支配的であったが、徐々に女性の自立意識が芽生え始め、女性運動も起き始めていた。これをホームズは感じていたのか、今までは悪女などを描く作品は多かったものの、生き生きとした、確固とした自我を持った女性たちの活躍が作品に多数出てくる。  ホームズは一度も恋愛をしたことがないという記述がありますが、当時としては珍しく、女性を異性としてではなく、1人の人間をとして、見ていたとい...

シャーロック・ホームズ・スペシャル その2

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 第2回目のテーマは、「 事件の表層と真相 」でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。今回は主に「 赤毛組合 」、「 唇のねじれた男 」(共に収録: シャーロック・ホームズの冒険 (←Amazon PR))の2つを取り上げています。 ・「 赤毛組合 」(1891年)( シャーロック・ホームズの冒険 に収録(←Amazon PR))では、赤毛の人だけ、しかも好条件といった不思議な仕事の募集があった。実は、これは巨大な犯罪の一環で行われており、対象とされた質屋の主人に狙いを定め、その人が働いている間に、元々働いていた質屋の地下で犯罪の準備をしていた。このように知らず知らずのうちに、犯罪に協力していたという顛末を描いた話。 → 圧巻の情景描写はもちろんのこと、 日常という表層の下にうごめく悪意がある 。 ・「 唇のねじれた男 」(1891年)( シャーロック・ホームズの冒険 に収録(←Amazon PR)では、夫も誘拐事件にみえた犯罪が、実は妻に自分の秘密である仕事はせず、物乞いをしていたといったことを隠すために行われた夫のとっさの行為であり、犯罪・事件ではなかったという話。 → 同じ行動であっても、夫の言い分と妻の見え方、事前の情報、ここでは妻の夫への信頼・愛情があることで、両者に食い違いが生まれている。そこから 垣間見える人間の真実 を描いています。  些細な出来事の裏に大きな犯罪があり、重大事件と思われた出来事が実は平凡な人間の弱さから発しているという皮肉。人間ならではの盲点や錯覚があり、人生や出来事が一筋縄ではいかない多層的なものであると例示している。 【本】 ・ NHKテキスト (←PR:Amazonリンク) 過去の関連記事 ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その4 (2024年2月5日公開) ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その3 (2024年2月5日公開) ・ シャーロック・ホームズ・スペシャル その1 (2024年2月4日公開)

シャーロック・ホームズ・スペシャル その1

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 第3冊目は、シャーロック・ホームズを取り上げます。NHK  100de名著では名著133番目で、初回の放送は2023年9月です。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。  シャーロック・ホームズは、世界で最も有名な名探偵、このシリーズはイギリスで開業医をしていた「アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle)」(1859~1930)が書いた探偵小説のことです。元医師であったことから、単なる謎解き物語にとどまらず、深い人間洞察に裏打ちされた「人間とは何か?」を問いかけているという。  作品の多くは、事件の当事者や捜査に行き詰まった警察がホームズに助けを求め訪ねて来ることから始まります。ホームズは現場に調査に赴き、警察の見過ごした物証を発見し鮮やかな推理力を働かせて、事件の謎をことごとく解き明かしていきます。多くのケースが相棒であるワトスンによる事件記録という形で書かれますが、 事件を通じて、人間に関する普遍的な問題を炙り出している という見方もできるという。 第1回目のテーマは、「 名探偵の誕生 」でした。まずは、ドイルの第1作 「緋色の研究(A Study in Scarlet)」  (1887年発表)(←PR Amazon)を取り上げ、次のような特徴があるという。 ポイント : ・月刊誌というものが創刊されていた状況 → 一話読み切り型の連続短編小説(今まで、脈絡もないいろいろな物語が掲載されていた) ・「切り裂きジャックの事件」犯罪があっても警察では解決されない事件も多くあった → ホームズがいれば、難事件を見事に解決できるといった期待 ・(語り手)ワトソンの存在 → 読者と「対話」しながら、ホームズの推理の凄さを強調   特に第1作目ということもあり、 ドイルの 思い入れがあると思われる   「緋色の研究(A Study in Scarlet)」  (1887年発表)(←PR Amazon)。このタイトル「緋色( 濃く明るい赤色、血の色 )=殺人」とし、殺人事件の解決を導くことを「緋色の研究」としている。人は殺人を犯したら、取り返しがつかない。人生という無色のもつれた糸の束には緋色の糸があり、この緋色を引き抜き、明らかにしていくのが探偵であり、このことは人生を研究することにつながるため、...

司馬遼太郎「覇王の家」その4

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  第4回目のテーマは、 「後世の基盤をどう築いたか」 でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。  まずは、「小牧・長久手の戦い」の後、秀吉と織田信長の次男・信雄は戦をし、その後、講和している。そのため、秀吉と戦う大義名分がなくなった。そこで、家康は家臣を集め、秀吉と講和をするのか、家臣からの意見を求めた。  通常、大名であれば、自身の考えで決めるところ、家康は聞き上手で、家臣の意見を聞くということが家康らしい(三河かたぎ)。家臣の意見を聞くことで、家臣も言ったからにはやらないといけないと思わせることを思っていたのでは?と言うこと(これが後述するように、日本らしいと)。  結局のところ、秀吉と和睦を結ぶが、なかなか結ばなかったことから、周りからは特別視されるようになった。   「三河かたぎ=日本人の気質」 とし、今までもあったように、律儀で実直。しかし、欠点もあり、この欠点は、 排他的 であるとする。この三河人が江戸幕府を築いたため、確かに、鎖国(海外との貿易禁止)、キリスト教は禁止(禁教令、<ー>信長はキリスト教を受け入れた)・・・、と排他的。この排他的であり、またこれに加え、家臣の領地に関しても、あえてわずかしか与えず、その方が家臣の結束があるとした。  このようなさまざまなことを行うことで、約260年もの間の江戸時代、天下安泰であった。 これも三河かたぎから来るもので、唯物史観ではなく、人間史観ともいうべき、人間中心で歴史を捉えた。 【本】 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(上) (←PR:Amazonリンク)         ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(下) (←PR:Amazonリンク)    ・ NHKテキスト (←PR:Amazonリンク) 関連記事 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その3 (2024年1月29日公開) ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その2 (2024年1月28日公開) ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その1 (2024年1月28日公開)

司馬遼太郎「覇王の家」その3

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 第3回目のテーマは、 「人生最大の戦果はこうして生まれた」 でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。  第2回にあったように、家康の信長に尽くす姿は、律儀者としてのうつりましたが、信長の死後、天下を目指すこととなり、家康が「謀略家」としての姿が垣間見えるようになった。  例えば、  ・本能寺の変の後は、真っ先に明智光秀を討伐せず、少し待ち、他の武将の出方・動きを見ていた。  ・柴田勝家(織田信長の筆頭家老)賤ヶ岳の戦いで秀吉が勝ち、国宝級のお礼を送り、秀吉側に寄り添うような姿勢を見せていたものの、結局、織田信長の次男・信雄からの要請で、秀吉と「小牧・長久手の戦い」で戦うこととなる。  この本の大きな部分を占める、大軍の秀吉と戦った「小牧・長久手の戦い」。この戦いでは、圧倒的に戦力の違いはあったものの、勝利を収めた。これの勝因として、兵のコントロールや情報収集能力などに長けていたという。そもそも、家康にある「三河かたぎ=実直・律儀」があり、これらに繋がっているとした。家康は、当時流行の茶器や明宝には興味を示さず、「わが宝は、身代わりになってくれる家臣が5百ほどいることだ」と誇っていたとか。  また、この「三河かたぎ」があったからこそ、江戸時代の幕府の官僚制を成功させ、約260年もの間平和な社会であった。  司馬は、自ら戦争の経験があることから、この「小牧・長久手の戦い」を「秀吉軍=日本軍」として捉え、 当時の日本軍は、家康のような戦略眼があったら、太平洋戦争のような惨めな負けはしていなかったのでは? 、と重ねているのでは言う(秀吉は朝鮮出兵でも多くの兵を失っており、また、ノモンハン事件、インパール作戦等、当時の権威主義的・皇国史観がこのような大失敗を招いた)。  このように、人を描いて歴史を描くといった人物史観、ジャーナリスティックな感性、全体を見ながら部分を見ている、で歴史を描こうと挑戦していると。 【本】 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(上) (←PR:Amazonリンク)         ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(下) (←PR:Amazonリンク)    ・ NHKテキスト (←PR:Amazonリンク) 関連記事 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その4 (2024年1月29日公開) ・ 司馬遼太郎「覇王...

司馬遼太郎「覇王の家」その2

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 第2回目のテーマは、 「「律儀さ」が世を動かす」 でした。この回のNHKの説明は、 こちら (←外部リンク)から。  この2回目は、特に「信長との関係」についてでした。桶狭間の合戦(1560年、信長(勝利) vs 今川義元)の後、清洲同盟を結ぶ。これ以降の信長が亡くなるまで同盟関係を結んでいた。家康が幼い時、今川家の人質、また正室・築山殿は今川家出身、と今川家と近かったが、この桶狭間の合戦をきっかけとして、信長の方に近づいていく。  家康は、織田家の人質になっていた少年時代、天才、信長には敵わない、また、信長と共に天下統一を行いたいと思ったのではないか? そのため、同盟を結んでから一度も離れていない。律儀に関係を守っていた。司馬は、このような信長との関係を「家康は信長の下請会社の社長にあたる」としていた。  このような関係を維持するためには、「律儀さ」が必要で、正妻・築山殿や長男・信康(信長の娘と結婚)を殺されようとも、時には富士山に接待登山を行ったりと、信長に仕えていた。ここでも主人公の性格で説明している。やがて、信長にも認められていく。  本能寺の変で、信長が亡くなり、状況が一変した。信長に代わり、天下を目指して行くこととなった。 【本】 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(上) (←PR:Amazonリンク)         ・ 司馬遼太郎「覇王の家」(下) (←PR:Amazonリンク)    ・ NHKテキスト (←PR:Amazonリンク) 関連記事 ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その4 (2024年1月29日公開) ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その3 (2024年1月29日公開) ・ 司馬遼太郎「覇王の家」その1 (2024年1月28日公開)